Research

有機薄膜の内部構造解析

テンダーX線(X線エネルギー1~4keV程度)を利用することで、薄膜中の厚み方向の構造不均一性を評価しています。テンダーX線を薄膜表面に対して非常に浅い角度(Grazing angle)で入射します。テンダーX線領域では、有機薄膜に対して、X線が透過しにくく、入射角に応じて膜の表面からの潜り込み深さが(数10nm程度の分解能)異なること利用推して、表面近傍から深いところまでの構造を探ることができます。

PF newsの表紙にも掲載されています。
PF news 33(2), 11-15, 2015 (Topics): Itsuki Saito, Katsuhiro Yamamoto

異常小角散乱による多成分系の高分子材料の構造解析

特定元素の吸収端近傍のX線エネルギーで小角散乱測定を行うことで、特定元素の空間分布について議論ができます。吸収端近傍の少なくとも3つの波長(エネルギー)での小角散乱法によって得られる散乱データを解析することで達成されます。我々は、薄膜中でブロック共重合体がシリンダー状ドメインを形成する試料を用いて、第3成分である高分子をブレンドした際に、それがどの領域に分布するのかを評価しました。

Macromoleculesに掲載され、Supplementary Coverに採用されています。

新規相分離構造の探索

ブロック共重合体が形成するミクロ相分離構造は構成成分の体積分率に応じて球状、シリンダー状、ラメラ状ミクロ相分離構造を形成します。またシリンダーとラメラ状構造の境界では共連続構造(Bicontinuous)であるジャイロイド構造やFddd構造が見出されています。球状ミクロ相分離構造においては、ほとんどがBCC格子(体心立方格子)を組んだものになります。近年球状ミクロ相分離構造においてもFCC格子(面神立方格子)を組むことも見出され、新しいモルフォロジー探索にも注目が集まっています。共連続構造においてジャイロイド構造(Ordered Bicontinuous Double Gyroid : OBDG)に似た構造でダイヤモンド格子(Ordered Bicontinuous Double Diamond : OBDD)を組むものが発見されました。しかしブロック共重合体単独では理論的にも安定構造でなく、特殊な高分子であることが必要であります。ブロック共重合体にもう一成分の高分子を混ぜることで、出現するモルフォロジーに幅が広がります。我々は、そのようなブレンド系において、ダイヤモンド構造が熱力学的に安定構造として、発現することを見出しました。

また、球状ドメインを形成する系において、このブレンド系において球状ドメインの複雑なパッキング様式となる、σ結晶、A15相、12回対称準結晶であるDDQCなど発見しています。

中性子反射率測定による薄膜中のナノ構造解析や水の空間分布など

ハイドロゲル(含水したゲル)表面近傍の水の分布状態を中性子反射率測定により評価しました。実験は、茨城県の大強度陽子加速器施設(J-PRAC)、物質・生命科学実験施設(MLF)のBL16のSOFIAという装置で測定しています。ゲル表面をプラズマで処理した試料としていない試料において表面近傍での水の含水量が異なることを突き止めています。 左の図は、中性子反射率のデータ(白抜きのシンボル)であり、実験データを再現するように、右図の処理表面からの水の分布を仮定することで実験データをうまく再現しています(左の図の実線)。

中性子散乱法によるナノ構造解析

X線散乱法と原理は同じであるが、散乱対称となるのは原子核であり、原子核の散乱能の違いを利用することでナノ構造解析が可能となります。X線散乱では電子による散乱であるが、中性子は原子核による散乱であるため、同じ構図であっても異なる情報が得られ、より詳細に構造解析が可能となります。例えば、下の図は重水と重水素化メタノールの混合溶媒を含んだハイドロゲルからの散乱を示していますが、左図はSAXS(X線散乱)、右図は中性子散乱のデータです。図中の数字は混合溶媒中の重水の体積分率を表しています。左右の図で同じ構造を視ていますが、散乱プロファイルは全く異なることが分かります。これらを詳細に解析することで、コア-シェル型のチューブ様構造をしていることが明らかとなりました。

相分離構造の配向制御

薄膜中にシリンダードメインを高度に垂直配向させました。その後、水洗浄することで、ナノチャネルを有した薄膜の作成に成功しました。薄膜の構造解析として、斜入射小角X線散散乱法(Grazing Incidence Small Angle X-ray Scattering : GISAXS)、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy : AFM)、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy : TEM)を用いて行いました。

厚い膜(膜厚1㎜程度)においてもシリンダードメインを配向させることに成功しています。熱力学的非平衡構造である球状ドメイン(本来はシリンダー構造を好む)を作成しておき、その後、適切な溶媒の蒸気雰囲気にさらすことで、蒸気浸透方向にシリンダードメインが並ぶことを利用しています。

セルロースナノファイバー複合材料に関する研究

セルロースナノファイバー分散状態を小角散乱法により解析しています。また複合化の手法に関しても様々トライしています。

競争的資金

科研費(文部科学省)

  • 「階層的構造を利用したイオン伝導の力学応答機構の解明」基盤研究(B) 2021.4-2024.3 研究分担
  • 「自己形成性層状複水酸化物ゲルの構造及びイオン導電機構解明」基盤研究(C) 2021.4-2023.3 研究分担
  • 「ブロック共重合体の球状ミクロ相分離構造における準結晶および近似結晶の発現機構」新学術領域研究(研究領域提案型)公募研究 2020.4-2022.3 研究代表
  • 「硫黄含有高分子薄膜のテンダーX線小角散乱による構造解析」挑戦的研究(萌芽) 2020.8-2022.3 研究代表
  • 「先端量子ビームが解き明かす金属/樹脂接合界面の階層構造と接着機構」基盤研究(B) 2020.4-2023.3 研究分担
  • 「蛍光X線分析と斜入射小角散乱の同時測定による多成分有機薄膜の空間分解構造解析」基盤研究(B) 2017.4-2020.3 研究代表
  • 「ブロック共重合体の粘着メカニズム解明による強接着・遅延接着性粘着剤の設計提案」基盤研究(C) 2017.4-2020.3 研究分担
  • 「多波長X線微小角入射散乱法による多成分複合系有機薄膜の精密構造解析とその手法確立」基盤研究(C) 2014.4-2017.3 研究代表
  • 「反応誘起相分離によるメソスコピック構造形成の直接観察による素反応と構造形成の相関」基盤研究(C) 2010.4-2013.3 研究代表
  • 「微小角入射広角・小角X線散乱同時測定法によるブロック共重合体薄膜の階層構造解析」若手研究(B) 2008.4-2010.3 研究代表
  • 「動的非対称性ジブロック共重合体の秩序・無秩序状態における協同運動性に関する研究」若手研究(B) 2004.4-2006.3 研究代表

その他

  • 「愛知県:知の拠点あいち重点研究プロジェクト(II期)・モノづくりを支える先進材料・加工技術開発プロジェクト・難加工・高機能部材分野分野
    「セルロースナノファイバーを活用した高機能複合材料開発と実用化」2016.8-2019.3 研究代表者
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